このごろ頭が痛む。
耳の上あたりと、首の後ろ。
突っ張るような痛みだ。
体調を崩した初期(8年前くらい)の痛み方によく似ている。
私のうつ症状は、時間の経過とともに感触を変化させた。
「身体が痛む」「思考が拙い」のは継続しつつ、それに加えて、こめかみが激しく痛む、夜に眠れない、身体の左側の感覚がおかしい、腹部の力が入りにくい……など、時期によってメインになる症状が入れ替わった。
また、その各ステージには対応する気分がセットになっていて、強気、センチメンタル、無能感…など、優位な感情もその時どきで入れ替わった。
そのつど世界が違った心象で感じられた。
うつ病の回復は、遡るようにして進む。
今いるステージから、ひとつ前のステージへ。
私がいま立っている「こめかみが痛いステージ」は、冒頭でも述べたようにかつて立ったことのある懐かしい場所だ。
そして興味深いことに、やはり当時と「気分」や思考回路も似ている。
セット、である。
人間のマインドが、肉体をともなう内的構造に強力に道を付けられていることを、再認識させられる。
頭と身体の全体で、「心」なのだ。
かつて今日と似た体調の日、私はただ混乱・恐怖するばかりで、さらなる迷走へ転落していくばかりだった。
しかしその後長い年月を経て、瞑想によるコントロールを少し身につけた私が、一歩引いた所から自分の体調を眺めている。
どのように持っていけるか、腕が鳴るといってはおかしいが、旧敵にリベンジを挑むような奇妙な感慨がある。
体調を戻す過程では、しばしば上記のようなかつて通った場所を再び通る感覚を体験する。
症状のバリエーションを数多く経験し、それぞれに冷静な目を向けられるようになってから気付いたことだ。
私はけっこうな年月を要したが、良くも悪くも「慣れ」は何にでもある。
病気も例外ではない。
いま最大と思える苦しみのうちにいても、病気に渡り合って凌駕できる日がくることを信じてほしい。
偉そうに言えるわけではないが、私は少なくとも、希望を持って生きられるようになっている。
